星を見上げる

宇宙物理学者によると、この宇宙にある物質とエネルギーのうち27%が「ダークマター」というもので出来ている。ダークマターとは簡単に説明すると、宇宙全体の27%の物質の名称です。

地球や太陽、君やチーズバーガーなど私たちが普通だと思っている「普通の物質」は宇宙に5%だけしか存在しない。

宇宙にある物質のほとんど(95%)はダークマターとダークエネルギーといって、私たちがよく知っている普通の物質(5%)とは違う種類の物質なのだ。

「この謎の物質たち」は見慣れた「普通の物質」の5倍も宇宙に存在していて、私たちが普通に触っている物資は宇宙全体の5%しか無いので本当は珍しく、「ふつう」では無い。

では、ダークマターとは一体何なのか?暗黒物質なんて、危険な物なのだろうか?なぜダークマターが存在すると言えるのか?簡単に解説していきます。

宇宙の物質をエネルギーを円グラフにするとこうなる。

ダークエネルギー

ダークマターはいたるところにある。まさに今、君もその中を泳いでいる。

ダークマターが存在するという説が初めてでてきたのは、1920年のことだった。そして、1960年になると、銀河の回転の様子と、銀河の質量におかしなところが見つかってやっとダークマターが真剣に受け止められるようになった。

なぜダークマターがあると分かるのだろう?

1、銀河の回転

ダークマターと銀河の回転がどのように結びつくのだろうか?例えば、あなたが回転する遊具に乗っていると考えて欲しい。

画像のような遊具に乗って回転すると、回転が速いほど、強く外側に引っ張られてしまう。回転する銀河も同じように、外側に引っ張られる力が働く。

銀河も回転しているので、その中にある星は銀河の外側に飛び出そうとする。だが、実際は飛び出していない。

星を外に逃さないようにつなぎとめている力は銀河の中にあるすべての物質がおよぼす重力だけだ。(重力は質量をもつ物体を引き寄せる)

銀河の回転スピードが速ければ、速いほどすべての星を引き止める為には、多くの力がいる。つまり、銀河の中に多くの質量(重力)が必要になる。

逆に銀河の質量(重力)が分かれば、その銀河がどのくらいのスピードで回転できるかを推測できる。

天文学者はまず、星の数を数えて銀河の質量を推定しようとした。

でも、その値を使って銀河の回転スピードを計算すると、つじつまが合わない。実際に計測した回転スピードが星の個数から、推定したスピードより、予想外に速かったのだ。

つまり、星が外側に飛び出さないようにする重力より、銀河の回転する力の方が強い。

星を引き止める重力より外へ飛び出す回転の力が強いのであれば、星は銀河から飛び出していなければおかしいのだ。

実際の測定した銀河の回転スピードから質量を計算すると、計算に使う銀河の質量を大幅に大きくして、星をつなぎ止めないといけない。

実際にはそんな質量(重力)はない。この矛盾を解決するために、重くて目に見えない「ダーク」な何かが銀河の中に大量に存在すると考えたのだ。

有名な天文学者カール・セーガン

有名な天文学者カール・セーガンは「とんでもない主張にはとんでもない証拠が必要だ」と言っていたように、この奇妙な謎は何十年も解けなかった。でも年月が過ぎて、この見えなくて思い謎の存在(ダークマター)は受け入れられるようになってきた。

2、重力レンズ

ダークマターが確かに存在するとか科学者が納得したもう一つの重大な手がかりは、光が曲がる現象だ。

それを「重力レンズ」と言う。

重力レンズ

天文学者が夜空を見上げていると、ある方向に銀河が見える。でも、望遠鏡を少しずらすと、さっきの銀河とそっくりな銀河が見える。

色も形も、飛んでくる光も同じように見える。全く同じ銀河が別の場所に、2つ見えるなんてあるのだろうか?

もし、地球とその銀河のあいだに何か重く見えない何か(ダークマター)が存在したら?

1つの銀河が2つに見えるのにも納得がいく。その重くて見えない存在が巨大なレンズのように働いて、銀河からやってくる光を曲げる。だから2つの方向から、同じ光がきているように見えるのだ。

地球にいる人が、望遠鏡を覗くと、夜空の2つの方向に同じの銀河が見える。この現象はあちこちで見つかる。だから、ダークマターがそこら中に存在していると考えられるようになったのだ。

どの方向を見てもダークマターの証拠が見えるので、ダークマターがとんでもない説ではなくなった。

3、銀河の衝突

一番説得力のあるダークマターの証拠に巨大な銀河の衝突だ。

今から何百年も前に2つの銀河団が衝突した。私たちは運よく巻き込まれなかったけれど、衝突の光は何百年もかけて地球にやってくるので、その爆発を落ち着いて見ることができる。

2つの銀河がぶつかると中のガスや星たちが、ぶつかり凄まじい大爆発が起こる。塵の巨大な雲がバラバラに引き裂かれたのだ。

その大爆発を観察した天文学者はある事に気がついた。衝突現場のそばにダークマターの巨大な塊を2つ見つけたのだ。もちろんダークマターは見えないので、重力レンズによる光の歪みを測る事で間接的に見つけることができる。

しかも、その巨大なダークマターの塊2つは衝突してもすり抜けているように見えたのだ。

この現象から、天文学者はこう考えた。まず、普通の物質(ガス、塵、星など)とダークマターで出来た2つの銀河団同士が衝突した。もちろん中のガスや塵、星はぶつかる。

でもダークマターがぶつかるとどうなるのか?
検出できることは何もなにも起こらない。

確認できたのは、2つのダークマターの塊はそのまま進み、お互いをすり抜けた。

暗黒物質
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ダークマターについて分かっていること

ダークマターは間違いなく存在していて、見慣れた物質とは違う不思議なものだと、よく分かったと思う。ここでダークマターについて分かっていることをまとめておこう。

  • 質量がある。
  • 見えない。
  • 銀河に含まれる。
  • 普通の物質では触れない。
  • ダークマター同士も触れない。
  • 名前がクール。

ダークマターはどこかに隠れているわけではなくて、大きな塊になって宇宙を漂っている。銀河につきまとっているのだから、今この瞬間にもあなたがダークマターの中にいるのも間違いない。

今、あなたの体を貫いている物質がダークマターだ。そこら中に存在するのに、なぜこれほど謎なのだろう?どうして触れたり、見ることが出来ないのだろう?

ダークマターを調べるのが難しいのは私たちのような物質とは作用しあわないからだ。見えないのに、ダークな質量があると分かっている。だから、ダークマター(暗黒物質)。なぜ作用しないのかを説明する前に、まず普通の物質がどのように作用するのか考えないといけない。

物質はどのように作用しあうのか?

物質の作用のしかたは、おもに4パターンある。

重力

質量を持っている2つの物体は、互いに引き寄せ合う引力を感じる。

電磁気力

電荷を持っている2個の粒子の間に働く力。電荷のプラス(+)マイナス(−)が違うか同じかによって、引力か反発力になる。

物が触れるのも電磁気力のおかげ。スマホにタッチ出来るのも、スマホの分子が電磁気力でしっかり結びついているから、指が突き抜けたりすることはない。スマホの分子が電磁気力で結びつき、それをあなたの指の分子たちが跳ね返すからだ。

光や電気、磁気も電磁気力の働きだ。光や粒子と力の深い関係については、別の記事で紹介する事にしよう。関連記事『宇宙

弱い核力

電磁気力と似ていることが多いけど、電磁気力よりかなり弱い。

例えば、ニュートリノはこの弱い核力で他の粒子と弱く作用しあう。超高エネルギーになると、弱い核力は、電磁気力と同じ強さになって。「電弱力」という1つの力の一部になってしまう。

強い核力

原子核の中で陽子、中性子を結びつける力。この力がなかったら、プラスの電荷を持った陽子はお互いに反発して飛んでいってしまう。

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ダークマターはどのように作用し合うのだろうか?

この4パターンの力のリストはただ事実を並べただけだ。

物理学は植物学みたいなところもあるので、なぜこの4パターンの力があるのか、それは分かっていない。ただ人類がこれまでに観察できた力を並べただけだ。これ以外の力がたまたま観測していないだけで、存在するのかもしれない。

だが今のところ、素粒子物理学のあらゆる実験をこの4パターンの力で説明できる。

ダークマターの謎について、ダークマターにも質量があるのだから、重力は感じる。でもダークマターの作用で分かっていることはそれだけだ。

ダークマターは電磁気力は感じないとされている。分かっている限り、光を反射したり放ったりしない。目で見れないのは、そのせいだ。さらに弱い核力、強い核力も感じないようだ。

だから何か新しいダークマターをキャッチできる何かがない限り、普通のメカニズムで望遠鏡や検出器で捕まえる事は出来ない。だから調べるのが難しいのだ。

ダークマターに作用するのは重力だけだ。ダークマターのマター(物質)はそこから来ている。ダークマターにも実体があり質量を持っていて、そして質量を持っているから重力を感じるのだ。

ダークマター

ダークマターを調べる方法は?

ダークマターが星を重力で引き寄せて、銀河の回転から星が外へ飛んで行くのを防いでいる。銀河からくる光を重力で曲げてレンズのような効果をする。銀河団同士が衝突して大爆発してもダークマターはすり抜けてしまう。

そんなやばいダークマターがある事は分かったが、もう一つの疑問がある。ダークマターは何で出来てるんだろう?

宇宙は何で出来てるのか』の27%はダークマターで出来ている。

宇宙に存在している事と、どのくらいの量があるかまでは分かっている。でもダークマターがどんな粒子で出来ているのか?そもそも、普通の物質のように粒子で出来ているのかも分からない。検証するには、仮説を立てて立証しないといけない。

単純で具体的な仮説を紹介しよう。ダークマターはある一つの新しい粒子で出来ていて、その粒子は新しい力で普通の物質とごくごく弱く作用する。これが一番単純で、最初に試すにはちょうどいい仮説だ。

この仮説の粒子は「弱く相互作用する質量のある粒子」(Weakly Interacting Massive Particle)の頭文字をとってWIMP(ウィンプ)と呼ばれている。

他の仮説で「重くて宇宙物理学的なコンパクトなハロー天体」MACHO(マッチョ)など仮説はいくつかある。

重力以外の力で検出が難しいので立証するための実験方法を考えると、1つ目は昔ながらの方法で低温の希ガスを容器に入れて希ガスの原子にダークマターがぶつかるの検出する。

この方法では、まだ検出できていない。

2つ目の方法は、高エネルギーの素粒子加速器を使って普通の物質の素粒子(陽子や電子)を加速し衝突させて、新しい物質を作る方法だ。

素粒子同士がぶつかるとその中身が組み替わって新たな物質が生まれるからだ。この結果で見つけれるのはダークマターかもしれないし、別の素粒子かもしれない。

3つ目は、ダークマターがいっぱいありそうな所を望遠鏡で眺めて、ダークマター同士の衝突やダークマターと普通物資の衝突、普通物質同士の衝突を観測する方法だ。

これは普通同士が特定の条件でぶつかればダークマターになったり、ダークマター同士が特定の条件で、ぶつかれば普通物質になる可能性からだ。

 

ダークマター
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ダークマターは宇宙を解き明かす大きな手がかり

これまで大きな発見や科学的な進歩があったけれど、宇宙についていは謎が多い。ダークマターはその謎の大きな手掛かりなのは間違いない。

現在の数学的・物理的な宇宙モデルにダークマターは入っていない。質量と重力を持つ謎の何かが近くに大量に存在しているのに、何か分かっていない。その何かが分からないままで、この宇宙を理解したなんて言い張るわけにはいかない。

でも、考えてみて欲しい。もしそのダークマターがものすごい有用な物質だったら?

ダークマターは直接触れない何かでできている。見た事ないし、想像もしない振る舞いをするとしたら?ダークマターが新しい種類の素粒子で出来ていてその粒子を利用できたら?もしくは、仮説の検証中に新しい物理法則を見つけたら?

例えば、新しい相互作用や相互作用の新しい使い方とか。

もっと言えば、エネルギーをほぼ無限に取り出す方法があったとしたら?

例えば、あなたが生まれてから長い間ゲームをしていて、このゲームでは出来ないと思っていた事が、新ルールや新しいスキルで最高に楽しくなる攻略法を今まで知らずに、過ごしていたらどうだろう?

ダークマターの正体と振る舞いが分かった時、どんな技術や知識の扉が開くのだろうか。いつまでもダークなままの物質にしておくのは良くない。ダークだからどうでもいわけではない。

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