星が楽しくなる天文学

もし、「役に立つ」「役に立たない」で星を見上げない人は
大発見や新たな関連性に気づかないだろう。
実際、ノーベル賞の研究は大半が数十年も前に得られた科学的成果である。
しかも、当時は、まだ社会の役に立つかどうかわからなかった。
不思議なことを解明したい。もっと知ってみたい。
この記事がそのきっかけになれば嬉しいです。
 

天文学を知るには基礎の、時刻と時刻系についてお話しておきます。私達が通常の生活において意識する時刻はただ1つです。あなたの時計が指し示している時刻です。

海外旅行をすると国によって時間が違いますが、アメリカのような大きな国では、東部、中部、山岳部、太平洋岸、アラスカ、ハワイなど同じ国の中であるにもかかわらず、いくつかの異なった時間で生活することになります。

各国ごとに決められた時間を地方時といいます。これに対し、天文学では世界共通の時刻を使用することが多く、これを「世界時」と呼んでいます。

世界時とは

世界時(Universal Time:UT)は経度の基準となるグリニッジ天文台(イギリス)における平均太陽時(GMT)になります。

世界時は平均太陽時だとわかりましたが、平均太陽時が何なのか説明いたします。

1日の長さを表すには3種類の方法があります。まず、太陽が南中(真南にくる瞬間)してから次に南中するまでの時間を真太陽日といいます。各地において太陽が南中するのは昼間です。すると昼間に日付が変わってしまうことになってしまい、そのままでは、非常に生活しにくいことになりますので、真太陽日の1日の始まりは太陽の時角+12時間と決められています。

太陽は天の赤道に対して23゚27’傾いた黄道上を1年かかって移動しており、しかも一定の速度で動いているわけではありません。これは、地球の軌道がわずかに楕円軌道を描いているためですが、それによって、真太陽日の1日の長さは絶えず変化しています。1日の時間が日によって違ってしまうのでは困ってしまいます。

そこで、天の赤道上を一定の速度で移動する太陽を仮想し、平均太陽と呼ぶことにしたのです。この平均太陽が南中してから、次に南中するまでの時間は季節を問わず常に一定となります。これを平均太陽日といいます。そして、平均太陽日をもとに決められた時刻を平均太陽時といいます。

Astronomy
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均時差

均時差

平均太陽時による時刻と、真太陽時による時刻との差分を均時差といいます。下図に均時差の1年間のグラフを示します。グラフから2月中旬(真太陽時が最も遅れる)と11月上旬(真太陽時が最も進む)に均時差が最も大きくなることや、均時差が0となる日が年4回あることなどが読みとれるでしょう。

地方標準時と地方平時

日本国内のような限られた狭い地域においては、世界時を使用するよりも、その地域ごとに決められた地方標準時(Local Standard Time:LST)を使った方が便利でしょう。 地方標準時は、基本的にはグリニッジの子午線からの離角15゚ごとに世界時に1時間を加減することによって与えられています。

グリニッジから東(東経)に向かう場合には加えていき、西(西経)に向かう場合には減らしていきます。日本の場合には東経135゚(明石)を標準子午線としており、(135゚÷15゚=)9時間を時差として世界時に加えたものを日本標準時(Japan Standard Time:JST)と規定しているわけです。

東京と明石の経度差は4゚42’です。太陽は東から西に向かって1時間に約15゚ずつ移動していきます。ですから、東京では明石より約19分も早く太陽が南中してしまうのです。

それでは、東京での太陽の軌跡を均時差に合わせて補正するにはどうしたらいいのでしょう。簡単ですね、明石との時間差である19分間をキャンセルしてやればいいのです。

つまり、日本標準時の11時41分における太陽の位置をプロットしていけばいいということです。ここで強引に、この時間(仮に東京時間と名付けます)を東京における正午としてしまいましょう。そうすれば、東京時間正午における太陽の軌跡はほぼ均時差のグラフに一致することになります。

実は、天文学ではこの東京時間に相当する時間の考え方も使われています。これを地方平時(Local Mean Time:LMT)といいます。地方平時は各経度毎に固有の値となります。 言い替えれば、世界時に経度差(時間の単位に換算)をそのまま加減したものということになります。東京は東経139゚42’ですから、139゚42’÷15゚=9.3133、これを時間に直すと9時間18分48秒となります。世界時の0時は日本標準時午前9時、東京における地方平時午前9時18分48秒ということになるわけです。

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タイムゾーン

地方標準時によって各国の時間が決められているのですが、東西に長い国では1つの標準子午線だけでは実生活との差が生じてしまいます。

例えば、先のアメリカなどがいい例です。アメリカ本土だけを考えても、東西に約4500km、経度にして60゚近くにも達します。東京と明石の間だけでも19分の時間差があるのですから、アメリカの場合は大変なことが分るでしょう。仮にこの中央部に標準子午線を1本だけ設けたとしましょう。今、仮に標準子午線上で正午に太陽が南中しているということにします。

すると東海岸のニューヨークの太陽は既に2時間も前に南中を過ぎてしまっていますし、西海岸のサンフランシスコの太陽は南中の2時間も前ということになります。これでは、生活がしにくくていけません。

そこで、国内(本土内)を4つの地域に分割し、それぞれに標準時を設けているのです。当然、本土から離れているアラスカやハワイではもっと時間差が大きくなりますから、ここにも独立した標準時が設けられています。

結局、1つの国の中に6つの異なる時間が存在しているのです。このような地域分けをタイムゾーンといいます。

なお、東経180゚の子午線と西経180゚の子午線は同じものですが、東経180゚の時差はUT+12時間、西経180゚の時差はUT-12時間となり、まる1日のずれが生じてしまいます。

そこで、この子午線を日付変更線とし、東経側から西経側へ通過する時には同じ日を繰り返すこととし、その逆の場合には翌日の日付にすることに決められています。

なお、日付変更線は、地形的な問題や政治的な問題から真っ直ぐにはなっていません。これは、タイムゾーンの分割線に関しても同様です。

グレゴリオ暦とユリウス暦

現在、私達が日常において使用している日数の数え方は、地球が太陽を1周するのに要する日数(1回帰年=365.2422日)を365日として数え、毎年の余りとなる0.2422日分の誤差を修正するために、4で割り切れる年を閏年として1日増やし(1年=366日)、100で割り切れる年を平年(1年=365日)とし、ただし400で割り切れる年は閏年とする、という方法で、グレゴリオ暦と呼ばれています。

ヨーロッパなどでは以前、ユリウス暦という日の数え方が使われていました。これは1回帰年を365.25日としたもので、実際の1回帰年である365.2422日との差の補正は行わない日の数え方です。つまり、4で割り切れる年を必ず閏年にするというものです。そのため誤差がどんどん累積してしまったのです。

そこで、誤差の分を修正するために、ユリウス暦の1582年10月5日をグレゴリオ暦の10月15日とし、現在のグレゴリオ暦に切り替えました。

なお、イギリスがユリウス暦からグレゴリオ暦に切り替えたのは1752年11月24日からですし、日本では1873年1月1日から、それ以前に使われていた太陰太陽暦からグレゴリオ暦に切り替えられました。

このように、各国によって異なる暦を使っていたために、古い文献などを調べる際には注意が必要となります。

グレゴリオ暦は現在、世界中で使われている暦ですが、1年の日数が年によって違っていたり、月の日数が月によって違っていたりと、不便な点も多々あります。そこで使われるのがユリウス日です。

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ユリウス日と準ユリウス日

ユリウス日(Julian Day:JD)は、世界時の-4712年(BC4713年)1月1日12時を0とした通日の値です。ユリウス日の1日は世界時の正午に始まります。そして時刻は日の小数として表されます。

たとえば、2000年1月1日0時(UT)は、ユリウス日では2451544.5日となります。起算日から6700年余りの年月が経過していますから、ずいぶんと大きな数になってしまっています。 さらに、日付の変わり目が実際のグレゴリオ暦と違っているのも不便であるという理由から、1973年の国際天文学連合(International Astronomical Union:IAU)において、1858年11月17日0時(UT)JD=2400000.5日を新起算日とする準ユリウス日(Modified Julian Day:MJD)が採択されました。

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