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きっと、あなたが想像しているよりも早く脳インプラントの時代がくるだろう。電子メッシュを脳に移植するような時代がくれば病気や治療の次元が変わってくる。

Nature Biotechnology』(9月2日付)に掲載された論文では、アメリカ・ハーバード大学医学大学院の研究者がパーキンソン病やアルツハイマー病といった脳の病気をメッシュ型のインプラントで治療する方法が論じられている。

このメッシュ型インプラントは、依存症の治療や、人間の学習能力を強化するといった治療以外の応用も期待できるそうだ。


人に機械の機能を追加する


「次のフロンティアは、人の認知と機械を融合させること」とショーン・パテル氏は話す。

論文によれば、脳にメッシュを移植すれば、脳の神経細胞の電気信号をデータ化して調べる事が出来る。神経細胞のコミュニュケーションの様子を元に信号パターンを脳に与えて治療するのだという。

「刺激を与える電極は超小型で、細胞かそれより小さい。これまでの電極というよりは、脳内や軸索内の細胞に近い。」

現段階で脳に刺激を与える主流な方法は、比較的大きなロッドを移植することだ。ロッド移植には問題があり、脳の免疫反応を起こしてしまうので、効果は時間とともに徐々に低下してしまう。

一方、大きさや柔軟さが脳内の細胞に似ているメッシュ構造のデバイスならば、そうした心配もない。

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Image by Gordon Johnson from Pixabay

健康な脳細胞を移動させる


脳に移植されたメッシュは電気的な刺激によって、新しく形成された神経細胞を脳の損傷を受けた部位に移動するよう促し、患部を修復させることができる。

たとえば、脳梗塞が原因で脳のある領域の細胞が死んでしまったとしても、健康な領域の脳細胞を移動させて、領域を復活させられるのだ。


メッシュの大きさ・形状・構造は、脳細胞に似せてあるので、神経細胞に沿って移動するのと同じように、新しい細胞はメッシュに沿って移動することができる。

「インプラントで、神経細胞を好みの場所にカスタマイズが出来るのです。」

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従来の神経電極(上図)は脳の免疫反応を引き起こすが、メッシュ電極インターフェース(下図)ならそのようなことはない。

今までの電極の場合、その大きさと硬さのために慢性的な炎症を引き起こしてしまう。これは脳組織と電極との間にグリア”細胞”死による瘢痕組織を作り出し、電極を劣化させる。開発したメッシュ電極は、脳そのものに似せた細胞・サブ細胞レベルの大きさや柔軟性があるために免疫反応をスルーできる。


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依存症治療や学習能力の強化


このインプラントが実用化されれば、放置しておけばパーキンソン病やアルツハイマー病の可能性がある脳回路を修復し、予防できるだろう。

あるいは依存症の患者に使えば、インプラントからわずか500ミリ秒の刺激を送るだけで、本人の意思では抑えられない不健康な欲求を静めることもできるかもしれない。

それどころか、人間の学習能力を高めるといった、治療以外の応用も期待できるそうだ。


悪用や副作用は?


この類の技術は素晴らしいものである一方、SFファンとしてはどこか恐ろしさを感じさせもする。

論文では、今後は人のもっとも私的な思考や記憶まで覗けるようになると説明されている。

実現されれば個人の購買意欲や思考、記憶などのデータを企業や政府が不正に利用するようになるのではないか?

あるいは、それによって政府の都合の良い思考に意思を操作したり、拷問をするよりも簡単に相手の秘密を無理やり暴き出すといった、権力者が喉から欲しがるような使い方も考えられる。

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Image by kentoh/iStock

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その先で待つのは理想社会か


脳インプラントというアイデア自体は新しいものではない。たとえば、実業家のイーロン・マスク氏は、「ニューラリンク(Neuralink)」という会社を通じて、同じような技術の開発をしているのは有名だ。

マスク氏は7月に、来年末までには患者の脳に移植するインプラントを完成させたいと発言。これはメッシュではなく、チップ型のもので、iPhoneのアプリとの連携も想定している。

ニューラリンクの当初の計画では、脊髄の損傷で四肢麻痺となった患者を対象としていたが、現在ではそれよりもさらに先の可能性を追求している。

こうした技術は人類を次の段階に進化させる鍵となるのは確かだ。しかし、同時に思考まで管理されたサイボーグ社会を予感させる諸刃の剣であるように思える。

脳インプラントが実用化されたとき、利用する側のリスクを知っておかなければならない

References:Brain Implants Like Elon Musk's Neuralink Could Change Humanity Forever | Inverse/ written by hiroching / edited by parumo

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