平均寿命を考慮した年金シミュレーション:支払額と受け取る額を詳細に解説
日本の年金制度は、老後の生活を支えるための重要な仕組みですが、実際に受け取る年金額は、納付期間や年齢、平均寿命などによって大きく異なります。本記事では、年金の支払額と受け取る額を、平均寿命を考慮して、具体的なシミュレーションを行いながら解説します。20歳から年金の納付を始めた場合、老後にどれくらい受け取れるのかを、詳細に理解していただけるように説明します。
1. 公的年金の基本構造
まず、公的年金の仕組みを簡単におさらいします。日本の年金は、基礎年金(国民年金)と厚生年金の2つに分かれています。それぞれの特徴を理解することが、シミュレーションの理解に役立ちます。
基礎年金(国民年金)
- 加入対象:すべての日本国民(自営業者、学生、無職の人も対象)
- 支払額:月額16,610円(2024年時点)
- 年額支払額:16,610円 × 12ヶ月 = 約199,320円
- 受給額(満額の場合):年間約79万円
- 納付期間:満額を受け取るためには、40年間の納付が必要
厚生年金
- 加入対象:会社員、公務員など、給与所得者
- 支払額:給与に比例
- 年額支払額:年収の18.3%(労使折半)
- 受給額:年収に応じて異なる。年収400万円の場合、年額120万円~200万円
- 納付期間:厚生年金の受給額は、納付期間や年収によって変動
2. 基礎年金(国民年金)の受給額シミュレーション
基礎年金は、納付期間40年を通じて受け取る額が決まります。ここでは、満額を受け取る場合のシミュレーションを行い、平均寿命を考慮して、何歳まで受け取れるかを見ていきます。
シミュレーション
- 支払額:月額16,610円 × 12ヶ月 × 40年 = 約796万円
- 受給額(満額の場合)
- 年間約79万円
- 受給年数を平均寿命に基づいて計算
日本の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳(2024年時点)とされています。ここでは、仮に20歳から始めた場合をシミュレーションします。
- 受給開始年齢:65歳(年金受給開始年齢)
- 受給年数(男性の場合):81歳 – 65歳 = 16年
- 受給年数(女性の場合):87歳 – 65歳 = 22年
表1:基礎年金の支払額と受給額
年数 | 支払額(40年間) | 受給額(16年受給) | 受給額(22年受給) |
---|---|---|---|
支払額 | 約796万円 | – | – |
受給額 | – | 約1,264万円 | 約1,738万円 |
ポイント
- 基礎年金の場合、支払った額は約796万円で、受給額は受給年数に基づいて異なります。
- 男性の場合、16年受け取ると約1,264万円、女性の場合、22年受け取ると約1,738万円となります。
3. 厚生年金の受給額シミュレーション
次に、厚生年金をシミュレーションします。厚生年金は年収に基づいて決まるため、年収400万円を例にして、受け取る額を計算します。
年収400万円の場合
- 年間支払額(従業員負担分):年収400万円 × 18.3% ÷ 2 = 36万6,000円
- 受給額
- 年額120万円~200万円(年収に応じて異なる)
- 受給年数を平均寿命に基づいて計算:
- 男性(81歳まで受給):16年受け取る場合、120万円~200万円 × 16年 = 約1,920万円~3,200万円
- 女性(87歳まで受給):22年受け取る場合、120万円~200万円 × 22年 = 約2,640万円~4,400万円
表2:厚生年金の受給額シミュレーション(年収400万円の場合)
年数 | 年間支払額(従業員負担) | 受給額(16年受給) | 受給額(22年受給) |
---|---|---|---|
支払額 | 36万6,000円 × 40年 = 約1,466万円 | – | – |
受給額 | – | 約1,920万円~3,200万円 | 約2,640万円~4,400万円 |
ポイント
- 厚生年金は年収に比例するため、年収が高ければ受け取る額も増えます。年収400万円の場合、男性は16年受給で約1,920万円~3,200万円、女性は22年受給で約2,640万円~4,400万円となります。
4. 基礎年金と厚生年金の合計受給額
基礎年金と厚生年金を合わせた受給額のシミュレーションを行い、総合的にどれくらい受け取れるかを見てみましょう。
例:年収400万円のサラリーマンの場合
- 基礎年金:年間約79万円
- 厚生年金:年間120万円~200万円
- 合計受給額
- 年間199万円~279万円(基礎年金+厚生年金)
表3:基礎年金と厚生年金を合わせた受給額シミュレーション(年収400万円の場合)
年数 | 基礎年金(年間) | 厚生年金(年間) | 合計受給額(年間) | 受給額(16年受給) | 受給額(22年受給) |
---|---|---|---|---|---|
受給額 | 79万円 | 120万円~200万円 | 199万円~279万円 | 約3,184万円~4,464万円 | 約4,378万円~6,138万円 |
ポイント
- 基礎年金と厚生年金を合わせると、年額199万円~279万円を受け取ることができ、16年~22年受け取る場合、合計で約3,184万円~6,138万円となります。
5. 年金の受給年数を決める要素
受給年数は、平均寿命を基に計算されますが、個々の健康状態や生活習慣にも大きく左右されます。したがって、以下の要素も考慮する必要があります。
- 男性の平均寿命(81歳):16年間の受給
- 女性の平均寿命(87歳):22年間の受給
- 受給開始年齢:原則65歳
- 健康状態:病気や事故による早期死亡も考慮
- 繰延受給:年金受給開始年齢を遅らせることで、受給額が増加する
6. 年金受給時期と受給額の比較
例えば、65歳ではなく70歳から年金を受け取る場合、受給額が**1年あたり7%**増加します。この繰延受給を活用すれば、長生きした場合の年金受給額を増やすことができます。
年金受給の最適な選択をするために、繰延受給(受給開始を遅らせる)と早期受給(受給開始を早める)の影響を詳細に解説し、表を使ってわかりやすく比較します。
ここでは、年金受給開始年齢を65歳、60歳、70歳の3つのタイミングでシミュレーションを行います。具体的な受給額は、基礎年金(満額)と厚生年金(年収400万円の男性)を例にとり、受給額がどう変動するのかを見ていきます。
受給額の変化
年齢 | 基礎年金(年間) | 厚生年金(年間) | 合計受給額(年間) | 受給額の増減(65歳基準) |
---|---|---|---|---|
60歳 | 約74.2万円 | 約112万円~188万円 | 約186.2万円~262.2万円 | 約6%減少(約13万円減少) |
65歳 | 約79万円 | 約120万円~200万円 | 約199万円~279万円 | 基準(受給額) |
70歳 | 約84.5万円 | 約128万円~214万円 | 約212.5万円~298万円 | 約7%増加(約13万円増加) |
6.1. 繰延受給(70歳)
- 基礎年金は、65歳から受け取る場合よりも約7%増加し、年間で約84.5万円となります。
- 厚生年金も、受給開始を70歳に遅らせることで7%増加し、年間で約128万円~214万円となります。
総受給額(70歳から)は、約212.5万円~298万円となり、65歳から受け取った場合の約13%増加が見込まれます。
6.2. 早期受給(60歳)
- 基礎年金は、65歳から受け取る場合よりも約6%減少し、年間で約74.2万円となります。
- 厚生年金も、受給開始を60歳に早めることで約6%減少し、年間で約112万円~188万円となります。
総受給額(60歳から)は、約186.2万円~262.2万円となり、65歳から受け取った場合の約6%減少が見込まれます。
受給額の増減を詳しく見る
繰延受給と早期受給を選んだ場合、それぞれの受給額がどれくらい増減するかを具体的に見ていきます。
年齢 | 基礎年金の増減 | 厚生年金の増減 | 合計受給額の増減 |
---|---|---|---|
60歳 | -6%(約4.8万円減) | -6%(約8万円~12万円減) | -6%(約13万円~17万円減) |
65歳 | 基準(受給額) | 基準(受給額) | 基準(受給額) |
70歳 | +7%(約5.5万円増) | +7%(約8万円~14万円増) | +7%(約13万円~19万円増) |
6.3. 受給額の増減ポイント
- 65歳から受け取る場合は基準額(基礎年金79万円、厚生年金120万円~200万円)となります。
- 60歳から受け取る場合は、受給額が約6%減少し、基礎年金は約74.2万円、厚生年金は約112万円~188万円となります。総受給額は約186.2万円~262.2万円となり、65歳から受け取った場合より約13万円~17万円減少します。
- 70歳から受け取る場合は、受給額が約7%増加し、基礎年金は約84.5万円、厚生年金は約128万円~214万円となり、総受給額は約212.5万円~298万円となります。65歳から受け取る場合より約13万円~19万円増加します。
7. 最適な受給選択肢を決定するための要因
年金受給の最適なタイミングを選ぶためには、以下の要因を考慮することが重要です。
7.1. 健康状態と寿命予測
- 長生きする可能性が高い場合は、**繰延受給(70歳から)**を選択することで、受け取る金額が増加し、総受給額も大きくなります。
- 健康に不安がある場合や、早期に資金が必要な場合は、**早期受給(60歳から)**を選択することが有効ですが、受給額が減少するため、十分な資産計画が求められます。
7.2. 生活資金の必要度
- もし早期に生活資金を確保したい場合、早期受給を選ぶことができますが、受給額が減少する点を考慮し、生活費のバランスを見直す必要があります。
- 資産に余裕があり、老後の生活を長期的に支えたい場合、繰延受給で受給額を増やす選択肢が有利です。
7.3. リタイア後の収入計画
- 退職後に他の収入源がある場合(貯金、投資、年金以外の収入など)、繰延受給を選択して、将来的により多くの年金を受け取ることが可能です。
- 逆に、収入源が年金のみである場合は、早期受給を選んで早めに生活資金を確保することを検討することができます。
8. まとめ
年金の受給開始時期を変更することによって、受け取る年金額に大きな影響を与えることが分かりました。以下のポイントを考慮して、最適な受給時期を選ぶことが重要です。
- 繰延受給(70歳から)
受給額が増加し、長生きするリスクを考慮する場合に有利。最大で35%増加の可能性。 - 早期受給(60歳から)
受給額が減少するが、早期に資金を確保できるメリット。最大で30%減少。
最適な受給時期を選ぶためには、健康状態、生活資金のニーズ、長期的な収入計画を総合的に検討することが重要です。自分のライフスタイルに合わせた受給時期を選択し、老後の生活資金を最適に計画しましょう。
65歳で受けとる場合のシミュレーション結果
- 基礎年金(国民年金)
支払った額は約796万円で、受け取る額は、男性は16年で約1,264万円、女性は22年で約1,738万円となります。 - 厚生年金
年収400万円の場合、支払額は約1,466万円で、受け取る額は男性が1,920万円~3,200万円、女性が2,640万円~4,400万円となります。 - 基礎年金と厚生年金の合計
年額199万円~279万円を受け取り、受給年数に応じて合計3,184万円~6,138万円を受け取ることができます。
年金の受給額を最大化するためには、長期間納付することが重要です。また、iDeCoやNISAを活用した資産形成を行い、老後の生活資金を補完することも大切です。