化学反応の速さ
反応の速さの求め方
ある一定時間(⊿t)の間に、ある物質の濃度が⊿c(mol/L)変化する時(反応量と呼ぶ)、この反応の速さを次の式で表す。
|⊿c / ⊿t|[ mol/(L・S)]
※単位のSは秒(second)を表している。
例題:H2 + I2 →2HIの反応が以下のように起こった場合、反応速度を求めよ。
物質量の変化、時間の変化をそれぞれ抽出すると・・・
反応量: 0.1 – 1.0 = -0.9mol/L
時間の変化:10s
よって、反応の速度は-0.09[ mol/(L・S)]となる。
また量的関係から言って、H2分子1つが減少すると HI分子が2つできるので、HI分子の反応速度は、0.18[ mol/(L・S)]であることがわかる。
I2も同様に考えて、H2分子1つが減少すると、I2分子1が減少するので、I2分子の反応速度は-0.09[ mol/(L・S)]である。
反応速度式
反応速度と濃度
反応の速さと、反応物の濃度の関係を表す式を反応速度式と呼ぶ。物質の濃度が高ければ高いほど、物質同士が衝突する確率は高くなるため、反応速度vは速くなる
反応速度式の書き方
計測された時間⊿t における反応速度はそれぞれの物質の濃度の掛けた数に比例することが実験で確かめられている。そのため反応速度は反応物濃度を使って次の式で表すことができる
[A]、[B]:モル濃度
[A]と[B]はそれぞれの物質の濃度である。化学反応が進むということは、物質同士が衝突するという意味と等しいので、濃度が高ければ高いほど、反応速度は大きくなる。
k:反応速度定数
kは反応速度定数と呼ばれる。反応速度定数とは、その条件の化学反応によって決まる定数である。高ければ高いほど、化学反応の速度が早くなる(=化学反応の速さが早いと反応速度定数も大きい)。比例速度係数は温度が10K上昇すると、2~3倍になることが知られている。
m+n:反応次数
mとnの和は反応次数と呼ばれる(x、y等でも表現する)。そのその合計値によってその反応系の名称が異なる。反応字数の和が1の場合、一次反応と呼ぶ。反応次数の和が2の場合、2次反応と呼ぶ。ちなみに次の式は三次反応である。
v = k[A][B]2
例題
A+B→Cで表される化学反応がある。次の実験結果が得られた場合、Cの生成速度を反応速度式で示せ。
【実験結果】
Aのモル濃度を2倍にすると、Cの生成速度も2倍になる。
Bのモル濃度を1/2倍にすると、Cの生成速度は1/4倍になる。
一方、Bのモル濃度を1/2にすると、Cの生成速度は1/4倍になることから、[B]の次数は2であると考えられる。
1/2濃度の1/2mol/Lの場合は、1/2 × 1/2 = 1/4と、1/4になる現象に説明がつく。
多段階反応
多段階反応
化学反応は、最終的な生成物にいたるまでにいくつかの過程を経るものがある。そのような反応を多段階反応と呼ぶ。それぞれの反応を素反応を呼ぶ。
律速段階
全体の反応の速度は、最も反応が遅い素反応によって決定する(足手まとい的な)。そのような多段階反応のうちのある段階を律速段階と呼ぶ。
例
2N2O5 → 4NO2 + O2の反応速度式は、実際に測定すると次の式になる。
v = k[N2O4]
この反応は多段階反応であり、下記段階1の反応が最も遅い素反応なので、律速段階となる。
段階1: N2O5 → N2O3 + O2(遅い素反応) ←律速段階
段階2: N2O3 → NO + NO2(速い素反応)
段階3: N2O5 + NO → 3NO2(速い素反応)
活性化エネルギー
活性化エネルギー
化学反応が起こる際には、エネルギーの高い活性化状態を経る。この活性化状態になるために必要なエネルギーを活性化エネルギーEaと呼ぶ。活性化エネルギーは反応系によって固有の値をとる。
活性化エネルギーと反応速度
一般に、活性化エネルギーが大きければその反応速度は遅くなり、 活性化エネルギーが小さければその反応速度は速くなる。
可逆反応の方向性
可逆反応とは正逆どちらにも進む反応のことである。どちらにも進むのであるが、エネルギーの高い方から、エネルギーの低い方へ起こりやすい。
反応の速さを変化させる条件
反応の速さを変化させる条件
反応の速さを変化させる条件には濃度(圧力)、温度、触媒の3つがある。
濃度と圧力
濃度(気体の場合は圧力)を大きくさせることによって、粒子の衝突回数が増加し、反応速度が大きくなる。
温度
温度を上昇させることによって、活性化状態になる粒子の数が増加する。反応速度は10K上昇ごとに2~3倍になる。下図では横軸Aから右が活性化状態。赤線(高温)の方が、粒子数(縦軸)が多い。
触媒
触媒を加えることによって、活性化エネルギーが小さい別の経路を経て化学反応が進む。そのため、反応速度が大きくなる。下図では赤線が触媒使用時である。
触媒
反応自体には組み込まれないが(触媒は変化しない)、反応速度を大きくする物質を触媒と呼ぶ。触媒は活性化エネルギーの小さい別経路を作り出すため、反応速度が大きくなる。反応熱は、反応物と生成物のエネルギーの差によって生じるため、触媒を用いても反応熱は変化しない。
均一触媒
反応物と均一に混じりあう触媒。金属錯体、酸塩基触媒、酵素などがある。
不均一触媒
表面などで作用する触媒。反応物とは交じり合わない。金属などの固体触媒は不均一触媒と考えて良い。
酵素
生体内に存在するタンパク質。触媒として様々な化学反応に関わる。