酸と塩基の定義
酸と塩基の定義
酸と塩基(水に溶ける塩基性(水素イオン指数 (pH) が7より大きい)を示し、酸と中和する物質をアルカリと呼ぶ)の定義には、アレニウスの定義とブレンステッドの定義の2種類がある。アレニウスの定義はあくまで水溶液の酸・塩基を定義するものである。しかし、塩酸(酸)、アンモニア(塩基)などは気体としても存在するため、気体同士の反応を酸と塩基として定義することができない。そのため、より広く定義を拡張したのがブレンステッドの定義である。
アレニウスの定義
酸
水溶液中で電離して、水と反応し、オキソニウムイオンH3O+を生じる物質
塩基
水溶液中で電離して、水酸化物イオンOH-を生じる物質
アレニウスの定義によると、NH3も水と反応してOH-を生じるので塩基である。
ブレンステッドの定義
酸と塩基の価数
価数とは
いくつH+またはOH-が出るかを示した数を価数と呼ぶ。例えば、HClは電離して、1つのH+を放出するので一価の酸であると言える。
H+またはOH-が結合している元素が、何価のイオンになるかによって酸と塩基の価数は決定する。
一価の酸塩基
酸
フッ化水素 HF
塩化水素 HCl
臭化水素 HBr
ヨウ化水素 HI
硝酸 HNO3
酢酸 CH3COOH
塩基
水酸化ナトリウム NaOH
水酸化カリウム KOH
アンモニア NH3
二価の酸塩基
酸
硫酸 H2SO4
硫化水素 H2S
シュウ酸 (COOH)2
塩基
水酸化カルシウム Ca(OH)2
水酸化バリウム Ba(OH)2
水酸化マグネシウム Mg(OH)2
水酸化銅(Ⅱ) Cu(OH)2
三価の酸塩基
酸
リン酸 H3PO4
塩基
水酸化アルミニウム Al(OH)3
水酸化鉄(Ⅲ) Fe(OH)3
酸と塩基の強弱
強酸 ・ 弱酸と強塩基 ・ 弱塩基
酸の中には、酸性が強い強酸と酸性が弱い弱酸がある。また、塩基にも塩基性が強い強塩基と、塩基性が弱い弱塩基がある。
強酸
塩酸 HCl
臭化水素 HBr
ヨウ化水素 HI
硝酸 HNO3
硫酸 H2SO4
弱酸
フッ化水素 HF
酢酸 CH3COOH
硫化水素 H2S
シュウ酸 (COOH)2
強塩基 (1族と2族の金属からなる塩基が多い)
水酸化ナトリウム NaOH
水酸化カリウム KOH
水酸化カルシウム Ca(OH)2
水酸化バリウム Ba(OH)2
弱塩基
アンモニア NH3
水酸化マグネシウム Mg(OH)2
水酸化銅(Ⅱ) Cu(OH)2
水酸化鉄(Ⅱ) Fe (OH)2
電離度
酸と塩基の強弱は、H+やOH-がどれくらい電離しているかの違いによって生じる。この電離している割合を電離度と呼ぶ。
例えば、HClは水溶液中でほぼ100%H+とCl-に電離している。H+の割合が多いため、酸性が強くなり、強酸となる。一方、CH3COOHはH+とCH3COO-に電離している分子は少ない。そのため、酸性(H+の持つ性質)が弱く、弱酸となる。下画像では左:強酸、右弱酸。
電離度は次の式で求めることができる。
電離度と濃度
強酸はどのような濃度であっても 電離度は1(100%電離)であるが、弱酸はその溶液の濃度によって電離度は変化する。弱酸の場合、溶液の濃度が薄ければ薄いほど電離度は1に近づく(詳細は化学の電離平衡で)。
水のイオン積
水の電離
水は極わずかにH+とOH-に電離している。
水のイオン積
H+の濃度と、OH-の濃度を掛けたものは1.0×10-14(mol/L)2であり、温度が一定ならばこの値は変化しない。
また、この値はどのような水溶液(酸や塩基)であっても変わらない。H+とOH-は、出会えばすぐに結合してH2Oになる。そのため、中性の溶液に酸が加えられると、H+濃度が高くなり、OH-と出会う頻度が高くなるので、OH-の濃度は低下する。その結果、イオン積は1.0×10-14(mol/L)2に保たれる。塩基を加えてOH-が増えたときも同様の現象が起こる。
なぜ水のイオン積は一定なのか
分かりやすい説明があったので引用。H+とOH-の濃度はH2O全体から見ると、極小数であるということが重要。詳しくは化学の電離平衡で解説。
水素イオン濃度pH
酸の強さを示すpH
pHとはH+の濃度がどれくらいあるか0~14の数字で示した値である。値が低ければ低いほど、H+の濃度は高く、酸性が強い。
pHは以下の式で求めることができる。
例題
[H+] = 1.0 × 10-2
という濃度であったならば、pHは
pH = – log10 (1.0 × 10-2 )
よって、pH = 2となる。
水のイオン積とpH
H+の濃度と、OH-の濃度を掛けたものは1.0×10-14(mol/L)2であり、これを水のイオン積と呼ぶ。温度が一定ならばこの値は変化しない。これを利用して、OH-の濃度からpHを求めることができる。
例題
[OH-] = 1.0 × 10-2
という濃度であったならば、
水のイオン積は下の式で求めることができるので代入すると、
[H+]×1.0 × 10-2 = 1.0×10-14(mol/L)2