共有結合
共有結合とは
非金属原子(電子が欲しい原子)同士が、お互いの電子を共有してくっつくことを共有結合と呼ぶ。例えば、Hは最外電子殻に1つ電子が足らない状態、Oは最外電子殻に2つ電子が足らない状態である。それぞれが出会うと以下の図のように電子を共有する。
水分子の共有結合 http://www.britannica.com/
共有結合は、原子がお互いに最外電子殻の空きを埋めるために電子を引っ張り合っているイメージである。
分子
共有結合でできた物質を分子と呼ぶ。また、18族希ガスは共有結合せずに1つの原子だけで存在するが、これら分子(単原子分子)と呼んでいる。分子には、2つの原子から成る二原子分子(例:H2、HCl)、多くの分子からなる多原子分子(H2O、CO2)、極めて多くの分子からなる高分子(ポリエチレンなど)がある。
電子式・構造式
電子式と共有結合
共有結合は、最外殻電子(価電子)の取り合いなので、電子式で見てみると理解し易い。 電子を1つずつお互いに出して計2つの電子を共有している場合は単結合と呼ぶ。4つの電子を共有している場合は二重結合、6つの電子を共有している場合は三重結合と呼ぶ。
CO2の二重結合×2http://www.rainbow-chaser.info/
構造式
2つ電子を共有する結合を価標と呼ばれる線で表した式。電子式と対比すれば理解しやすい。
電子式を書かなくても、原子からでる価標の数(原子価)を把握しておけば、価標同士をつなげ合わせることによって構造式を作成することができる。 価標の数は、何価のイオンになるか(電子殻に何個空きがあるか)と同じ値である。
分子の形状
分子形状を決定するもの
分子は1つ1つが特有の形状をしている。その形状は、中心となる原子の共有電子対、非共有電子対の反発が最小限になるような形になる。これを原子価殻電子対反発則と呼ぶ。
メタンCH4の場合、Cが中止となり、その周囲をHとの共有電子対が4つ囲んでいる。そのため、正四面体形の分子形状となる。
水H2Oの場合、Oが中心となり、その周囲を2つのHとの共有電子対と2つの非共有電子対が囲んでいる。その結果、折れ線形の分子となる。
その他にも直線型、三角錐形など様々な形状がある。
配位結合と錯イオン
配位結合
非共有電子対(他の原子と共有結合していない電子)を他のイオンに与えて作る共有結合を配位結合と呼ぶ。例としてアンモニアと水素イオンの配位結合などがある。 配位結合も実質的に共有結合と差は無い。
錯イオン
分子やイオンが金属イオンと配位結合してできるイオンを錯イオンと呼ぶ。例えば、アンモニア と銀イオンが配位結合すると、ジアンミン銀イオンとなる。
また、水と配位結合する錯イオンをアクア錯イオンと呼ぶ。
金属原子の周囲にある分子orイオンを配位子と呼び、その数を配位数と呼ぶ。配位数は大体金属の価数×2となっているが、決まっているわけではない。配位数は1つの金属に複数個あると考えて良いが覚えておくべき代表的なものは以下の表である。
錯イオンの名称
配位子(非共有電子対を提供する分子)の個数+配位子の名称+金属イオン名称が錯イオンの名称となる。
配位子の名称
配位子の名称には次の種類がある。
- NH3アンミン
- H2Oアクア
- OH-ヒドロキシド(ヒドロキソ)
- CN-シアニド
- Cl-クロリド(クロロ)
- Br-ブロミド(ブロモ)
配位子の数
また、配位子の数の数え方は次の通りである。
- 2:ジ
- 3:トリ
- 4:テトラ
- 5:ペンタ
- 6:ヘキサ
- 7:ヘプタ
- 8:オクタ
- 9:ノナ
- 10:デカ
これらを合わせると、例えば[Fe(CN)6]3-ならば、ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)イオンとなる。
電気陰性度と極性
電気陰性度
共有電子対を引き寄せる力の値を電気陰性度と呼ぶ。周期表の右上(18族を除く)に行けば行くほど大きい。電気陰性度は電子親和力とよく混合する。電子親和力は原子が電子を受け取って陰イオンになる時に放出するエネルギーの量である。電気陰性度は、共有結合において共有電子対を引きつける強さである。かなり関連はしているが、混同に注意。
極性
電気陰性度が極端に高い原子(F、O、N、Clなどなど)と、低い原子(Hなどなど)が共有結合した場合、電子が電気陰性度が高い原子に引き寄せられる現象が起こる。これによって生じた電荷の偏りを極性と呼ぶ。極性が非常に強くなると、(電子を完全にもぎ取られて)イオン結合となる。
原子上の+-マークは電子の僅かな偏りを表しているhttps://en.wikipedia.org/wiki/
極性分子・無極性分子
極性分子
結合の極性によって電荷の偏りが生じた分子を極性分子と呼ぶ。電気陰性度の高い原子と低い原子が共有結合を形成した時にできる。代表的な極性分子は水である。極性があるものの多くは水に溶け易い。
無極性分子
電荷の偏りが生じていない分子を無極性分子と呼ぶ。。代表的な無極性分子は灯油などの油である。極性が無いものの多くは油に溶け易い。また、同じ原子からなる分子も無極性分子になる(H2、N2、Cl2など)。
分子結晶
分子結晶とは
分子同士が分子間力と呼ばれる弱い引力によって結合している結晶を分子結晶と呼ぶ。ドライアイス(CO2)やヨウ素(I2)などが分子結晶である。 氷は水素結合によって結びついた分子結晶である。
分子結晶の性質
次の4つがある。
- やわらかい・砕けやすい
- 融点が低いものが多い
- 電気を通さない
- 昇華するものがある (ドライアイスとヨウ素)
分子間力
分子間力にはファンデルワールス力、極性分子間に働く力、水素結合がある。
ファンデルワールス力
すべての分子間に存在する弱い引力のこと。分子が大きければ大きいほどファンデルワールス力は大きい。ファンデルワールス力が大きければ沸点も大きくなる。
極性分子間に働く力
極性分子の+と-の間に働く弱い静電気力のこと。ファンデルワールス力よりも強い。
水素結合
極性分子間に働く力のボスのようなもの。水素は電気陰性度が非常に低いため、+に大きく極性を持ちやすい。すると、他の-に帯電している原子と静電気的な力によって緩く結合する。分子間力の中では一番強い力である。水素結合が存在する物質は水素化合物の中でも沸点が高い。
共有結晶(共有結合の結晶)
共有結晶とは
共有結晶とは、結晶の全ての原子が共有結合によって結ばれている結晶。そのため、非常に硬く、融点が非常に高く、電気を導かない(黒鉛は例外的に電気を通す)という性質を持つ。
分子結晶と混同し易いので注意。分子結晶は1つ1つの分子が弱い力で繋がっている。共有結晶は1つ1つの原子が強い共有結合で繋がっている。
ダイヤモンド
C原子が共有結合した巨大分子。
水晶
SiO2が共有結合した巨大分子。
黒鉛
C原子が共有結合した巨大分子。しかし、全ての電子が共有結合しているわけではなく、自由電子として動き回れる電子も存在する。そのため、黒鉛は電気が通る。
ピンバック: 化学 金属結合(金属原子+金属原子) これを読めば時短で簡単に全部わかる | Youneed