マイクロ法人の節税効果が高くなる分岐点について、具体的に解説します。一般的には、個人事業主から法人化する際の節税効果は、所得が一定額を超えたときに顕著になります。その分岐点について、以下のポイントを考慮することが重要です。
所得税と法人税の比較
個人事業主の所得税率
日本の個人所得税は累進課税制度であり、所得に応じて税率が上がります。具体的な所得税率は以下の通りです(2024年時点):
- 195万円以下: 5%
- 195万円超〜330万円以下: 10%
- 330万円超〜695万円以下: 20%
- 695万円超〜900万円以下: 23%
- 900万円超〜1,800万円以下: 33%
- 1,800万円超〜4,000万円以下: 40%
- 4,000万円超: 45%
これに住民税(約10%)が加わるため、最高税率は約55%になります。
法人税率
中小法人(資本金1億円以下)の法人税率は、以下の通りです:
- 年800万円以下の所得: 15%
- 年800万円超の所得: 23.2%
これに地方法人税や事業税が加わりますが、全体の税率は個人の最高税率よりも低いことが多いです。
分岐点の具体例
- 所得が900万円を超える場合:
- 個人事業主の所得が900万円を超えると、所得税率は33%、住民税を含めると約43%になります。これに対し、法人税率は年800万円以下の部分が15%、それを超える部分が23.2%です。したがって、法人化することで税率が低く抑えられるため、節税効果が高くなります。
- 所得が1,800万円を超える場合:
- 所得が1,800万円を超えると、個人事業主の所得税率は40%、住民税を含めると約50%になります。この場合、法人化による税負担軽減効果がさらに顕著になります。
具体的な計算例
個人事業主としての税負担
例えば、所得が1,000万円の場合:
- 所得税:195万円×5% + (330万円-195万円)×10% + (695万円-330万円)×20% + (1,000万円-695万円)×23% = 50.35万円 + 13.5万円 + 73万円 + 70.15万円 = 207万円
- 住民税:1,000万円×10% = 100万円
合計税額:207万円 + 100万円 = 307万円
法人化後の税負担
- 法人税:800万円×15% + (1,000万円-800万円)×23.2% = 120万円 + 46.4万円 = 166.4万円
- 法人住民税や事業税など:概算で20%として、200万円×20% = 40万円
合計税額:166.4万円 + 40万円 = 206.4万円
これに加え、法人化により役員報酬や経費をうまく活用すれば、さらに税負担を減らすことが可能です。
結論
一般的に、所得が900万円〜1,000万円を超えると、法人化による節税効果が高くなるとされています。もちろん、具体的な節税効果は個別の状況(経費の計上可能性、家族の給与など)によって異なるため、専門家と相談しながら判断することが重要です。