中和の量的関係
中和とは
中和とは、酸と塩基が塩を形成する化学反応である酸が持つH+と、塩基が持つOH-が同じ量だけある時に、酸性・塩基性の性質が失われる現象である。
中和の量的関係
中和における酸と塩基について、次の式が成り立つ。どの式も最終的にはH+の量=OH-の量を示している。
H+の物質量 = OH-の物質量
酸の価数×酸の物質量(mol)= 塩基の価数×塩基の物質量(mol)
酸の価数×酸のモル濃度(mol/L)×体積(L) = 塩基の価数×塩基のモル濃度(mol/L)×体積(L)
弱酸(弱塩基)と強塩基(強酸)の中和
中和は酸や塩基の強弱に関係なく起こる。例えば、CH3COOHは、電離度小さいため、殆ど電離していないため弱酸である。そこにNaOHなどの強塩基を加えると、中和反応が進み、H+が消費される。すると、またごく僅かなCH3COOHが電離平衡を保つために電離する。これが繰り返されると、すべてのCH3COOHは電離し、中和される。
CH3COOH+NaOH→CH3COONa+H2O
酸と塩基の指示薬
酸と塩基の指示薬とは
酸性、もしくは塩基性によって色が変化する物質がある。それらを酸と塩基の指示薬と呼ぶ。指示薬のpHの変色域は、それぞれ異なっている。中和滴定実験では、中和点付近でpHが急変する。そのため、中和点と変色域が合った指示薬を使用しなければならない。
メチルオレンジ
変色域:pH3.1赤色~pH4.4黄色
メチルレッド
変色域:pH4.2赤色~pH6.2黄色
フェノールフタレイン
変色域:pH8.0赤色~pH.8黄色
中和滴定
中和滴定とは
濃度がわかっている酸や塩基との中和によって、濃度がわからない酸や塩基の濃度を 決定する実験方法を中和滴定と呼ぶ。
中和滴定実験道具
ホールピペット
正確に一定の体積を測ることができる。共洗いが必要。
ビュレット
一滴ずつ水溶液を垂らすことができ、垂らした液体の体積を測る。共洗いが必要。
メスフラスコ
正確に水溶液の体積を測ることができる。水溶液を調製するのに用いる。
コニカルビーカー
何かと便利なビーカー。ビュレットの下に置く。
共洗い
ホールピペットとビュレット内部は、水滴がついていれば、使用する前に共洗いをしなければならない。共洗いとは、使用する同じ水溶液で何度か洗う操作である。蒸留水などがついていれば、容器内の水溶液の濃度が変化してしまうため、このような操作をする必要がある。
メスフラスコやコニカルビーカーは共洗いする必要はない。メスフラスコは調整する際に蒸留水を入れるため問題ない。コニカルビーカーは蒸留水が付着して水溶液の濃度が低くなったとしても、その中に存在する酸or塩基の分子の数は変化しないため、中和には問題が出ない。
中和滴定実験方法
例:?mol/L CH3COOHと0.01mol/L NaOHの中和滴定実験
①0.1mol/L NaOHをビュレットに注ぐ。
②ホールピペットを使用して、10mlの?mol/L CH3COOHをコニカルビーカーに注ぐ。
③操作②で用意したコニカルビーカーに指示薬フェノールフタレインを数滴入れる。
④ビュレットからNaOHを出し、ビュレット先端の気泡を取り除く。
⑤ビュレットからNaOHをコニカルビーカーに1滴ずつ注ぎ、何mlで中和するかを調べる。
⑥仮に、中和するのにNaOHが10ml必要だったとしたら、CH3COOHの濃度は0.01mol/Lとなる。
動画はシュウ酸と水酸化ナトリウムの中和滴定実験
中和滴定曲線
中和滴定曲線とは
中和滴定した際のpHの変化をグラフ化したものを中和滴定曲線と呼ぶ。 縦軸がpHであり、横軸は滴下量(ml)である。
なぜ急激にpHが変化するのか(pHジャンプ)
縦軸pHが対数であるのに対し、横軸は普通の数字(滴下量ml)であることに由来する。
表にして見てみると
pH1の時、H+の濃度は、0.1mol/l
pH2の時、H+の濃度は、0.01mol/l
pH3の時、H+の濃度は、0.001mol/l
pH4の時、H+の濃度は、0.0001mol/l
pH5の時、H+の濃度は、0.00001mol/l
pH6の時、H+の濃度は、0.000001mol/l
pH7の時、H+の濃度は、0.0000001mol/l
pH8の時、H+の濃度は、0.00000001mol/l
…
と、pHは1ずつ減少すると、H+の濃度は1/10ずつ減少していく。
pH1からpH2へは、0.9mol/lの減少であるが、pH7からpH8へは僅か0.00000009mol/lの減少であれば良い。そのため、NaOHを一滴滴下しただけで、急激にpHが上昇してしまうという現象が起こる。
中和点での液性
中和滴定曲線において、酸の出すH+と塩基の出すOH-の量が同じになった点を中和点と呼ぶ。 中和によって生成された塩が加水分解するため、酸と塩基の種類によって必ずしも中性ではない。
- 強酸と強塩基の中和点:中性 どの指示薬でも良い
- 弱酸と強塩基の中和点:塩基性 指示薬にはフェノールフタレインを使用する。
- 強酸と弱塩基の中和点:酸性 指示薬にはメチルレッドを使用する。
逆滴定
逆滴定とは
酸の液体に、塩基として働く気体を吸収させて中和反応を起こさせ、残った酸をさらに中和滴定することによってどれくらいの気体が溶けたのかを求める実験方法である。もちろん塩基の液体に、酸として働く気体を溶かす場合も逆滴定と呼ぶ。
例:NH3(気)を硫酸に溶かした場合
NH3(気)を濃度が判明している硫酸に溶かす。
H2SO4 + 2NH3 → (NH4)2SO4
未反応の硫酸を水酸化ナトリウムで滴定する。この際、指示薬はメチルレッドかメチルオレンジを使用する。先の操作で生じた(NH4)2SO4が加水分解し、中和点が酸性に近づくためである。
H2SO4 + 2NaOH → Na2SO4 + 2H2O
あとは、次の計算式に入れて計算すれば、どれくらいのNH3(気)が硫酸に溶けたのかが判明する。
H2SO4が生じるH+の量 = (NH3が受け取るH+の量 + NaOHが受け取るH+の量)
二段階滴定
二段階滴定とは
二価の酸である炭酸H2CO3などを中和滴定した際に、中和点が2度現れる現象が起こる。これを二段階滴定と呼ぶ。これは、 炭酸が1つの水素を放出してHCO3–になりやすく、さらに放出してCO32-にはなりにくいという電離しやすさの違いが原因となっている。
電離しやすい:H2CO3 → H+ + HCO3–
電離しにくい:HCO3→ H+ + CO32-
そのため、完全にH2CO3 → H+ + CO3-の反応が終わるまで、次の電離は起こらない。完全に第一回目の電離が終わると、徐々にpHは上昇し、第二回目の電離が起こる。