無機物質の利用方法-塩化ナトリウムNaCl-
塩化ナトリウムNaClの利用
NaClは様々な用途に使用される。NaClを用いて、炭酸ナトリウムNa2CO3、塩化水素HCl、金属ナトリウムNa次亜塩素酸ナトリウムNaClOが作られる。
炭酸ナトリウムNa2CO3の製法(アンモニアソーダ法)
NaClと水H2OとアンモニアNH3と二酸化炭素CO2を反応させ、炭酸水素ナトリウムNaHCO3と塩化アンモニウムNa2CO3を生成する。
NaCl + H2O + NH3 + CO2 → NaHCO3 + Na2CO3
炭酸水素ナトリウムNaHCO3を熱分解し、炭酸ナトリウムNa2CO3を生成する。
NaHCO3 → Na2CO3 + H2O +CO2
金属ナトリウムNaの製法
NaClの融解液を電気分解し、塩素Cl2と金属ナトリウムNaを生成する。
2NaCl → Cl2 + 2Na
塩化水素の製法
NaCl水溶液を電気分解し、塩素Cl2と水酸化ナトリウムNaOHを生成する。
2NaCl + H2O → Cl2 + 2NaOH + H2
塩素Cl2に水を反応させ、塩化水素を生成する。
H2 + Cl2 → 2HCl
次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤・殺菌剤)NaClOの製法
NaCl水溶液を電気分解し、塩素Cl2と水酸化ナトリウムNaOHを生成する。
2NaCl + H2O → Cl2 + 2NaOH + H2
塩素Cl2と水酸化ナトリウムNaOHを反応させ、次亜塩素酸ナトリウムNaClOを生成する。
2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO + H2O
無機物質の利用方法-炭酸カルシウムCaCO3–
炭酸カルシウムCaCO3の利用
炭酸カルシウムからは、酸化カルシウムCaO、水酸化カルシウムCa(OH)2を経て、高度さらし粉Ca(ClO)2が生成できる。ちなみにさらし粉の化学式はCaCl(OCl)。
炭酸カルシウムCaCO3を加熱し、酸化カルシウムCaOを生成する。
CaCO3 → CaO + CO2
酸化カルシウムCaOと水H2Oを反応させ、水酸化カルシウムCa(OH)2を生成する。
CaO + H2O → Ca(OH)2
水酸化カルシウムCa(OH)2と塩素Cl2を反応させ、高度さらし粉Ca(ClO)2を生成する。
Ca(OH)2 + Cl2 → Ca(ClO)2 + H2
無機物質の利用方法-空気-
空気の利用
空気からは酸素O2、窒素N2、アンモニアNH3、尿素CO(NH2)2、硝酸HNO3、ニトログリセリンC3H5(ONO2)3が生成できる。
酸素O2の製法
空気を液体にし、分留して酸素O2を取り出す。
窒素N2の製法
空気を液体にし、分留して窒素N2を取り出す。
アンモニアNH3の製法(ハーバー・ボッシュ法)
空気を液体にし分留して取り出した窒素N2と水素H2を反応させ、アンモニアNH3を生成する。このアンモニア製法をハーバー・ボッシュ法と呼ぶ。
N2 + 3H2 → 2NH3
尿素CO(NH2)2の製法
アンモニアNH3と二酸化炭素CO2を反応させ、尿素CO(NH2)2を生成する。
2NH3 + CO2 → CO(NH2)2 + H2O
硝酸HNO3の製法
ハーバー・ボッシュ法によって生成したアンモニアNH3とO2を反応させ、硝酸HNO3を生成する。この製法をオストワルト法と呼ぶ。
NH3 + 2O2 → HNO3 + H2O
ニトログリセリンの製法
硝酸HNO3とグリセリンを反応させ、ニトログリセリンを生成する。
イオン結晶の利用方法
塩化ナトリウムNaCl
所在・製法:海など
利用:調味料
炭酸水素ナトリウムNaHCO3
所在・製法:NaCl水溶液とNH3、CO2を反応させる
利用:ベーキングパウダー、胃腸薬
炭酸ナトリウムNa2CO3
所在・製法:NaHCO3を熱分解する
利用:ガラス原料
水酸化ナトリウムNaOH
所在・製法:NaCl水溶液電気分解
利用:工業原料、石鹸原料、合成洗剤
次亜塩素酸ナトリウムNaClO
所在・製法:NaOHとCl2を反応させる
利用:漂白剤、殺菌剤
炭酸カルシウムCaCO3
所在・製法:石灰石、大理石、貝殻など
利用:石材、セメント、歯磨き粉
酸化カルシウムCaO
所在・製法:石灰石の熱分解
利用:乾燥剤、発熱剤
水酸化カルシウムCa(OH)2
所在・製法:CaOとH2Oを反応させる
利用:石灰水、漆喰
高度さらし粉Ca(ClO)2
所在・製法:Ca(OH)2とCl2の反応
利用:殺菌剤(プールなど)
塩化カルシウム CaCl2
所在・製法:CaCO3とHClを反応させる
利用: 乾燥剤、凍結防止剤
共有結晶の利用方法
ダイヤモンドC
所在:天然
性質:極めて硬い
利用:宝石、研磨剤
黒鉛C
所在:天然
性質:やわらかく、電気を通す
利用:電池の電極、鉛筆
二酸化ケイ素SiO2
所在:石英、水晶、ケイ砂
性質:かたい、融点が高い
利用:ガラス、光ファイバー
ケイ素Si
所在:SiO2から製造する
性質:半導体としての性質を持つ
利用: 半導体
分子からなる物質の利用方法
水素H2
製法
- 炭化水素を分解
- 水の電気分解
- 亜鉛と希硫酸を反応させる
利用
- 気球
- ロケット燃料
- 燃料電池
酸素O2
製法
- 液体空気の分留
- 水の電気分解
- 過酸化水素の分解(MnO2を触媒とする)
利用
- 医療用ガス
- ロケット燃料
- 燃料電池
窒素N2
製法
- 液体空気の分留
- NH4NO2水溶液の加熱
利用
- 冷却剤
二酸化炭素CO2
製法
- 石灰石の熱分解
- NaHCO3の熱分解
- CaCO3と希塩酸を反応させる
利用
- 炭酸飲料
- 冷却材
アンモニアNH3
製法
- 水素と窒素を反応させる(ハーバー・ボッシュ法)
- NH4ClとCa(OH)2の混合物を加熱
利用
- 冷却材
- 硝酸原料
- 窒素肥料原料
塩素Cl2
製法
- 食塩水の電気分解
- 高度さらし粉と塩酸を反応させる
利用
- 殺菌剤
- 殺虫剤
塩化水素HCl
製法
- 水素と塩素を反応させる
- NaClに濃硫酸を加える
利用
- 塩酸
- トイレ用洗剤
金属の利用方法
鉄Fe
鉱石:赤鉄鉱石Fe2O3、磁鉄鉱Fe3O4
用途:磁石、ステンレス(鉄+クロム+ニッケル)などの合金、建築材料など幅広く利用。
アルミニウムAl
鉱石:ボーキサイトAl2O3・nH2O
性質:空気中は酸化皮膜を作り反応しなくなるが、本来は反応性に富む。密度が小さい。両性元素である。
用途:建築材料、ジュラルミン(アルミニウム+銅+マグネシウム)などの合金、1円硬貨。
銅Cu
鉱石:黄銅鉱CuFeS2
性質:赤みを帯びている。展性、延性、電導性、熱伝導性に富む。
用途:電線、青銅(銅+スズ+亜鉛)、黄銅(銅+亜鉛)、白銅(銅+ニッケル)などの合金。
亜鉛Zn
鉱石:閃亜鉛鉱ZnS
性質:青みを帯びた銀白色。両性元素である。
用途:乾電池、トタン、黄銅などの合金。
銀Ag
性質:金属の中で電気・熱の伝導性が最も高い。
用途:装飾品、食器など。
水銀Hg
性質:唯一常温で液体の金属である。
用途:温度計、蛍光灯。
チタンTi
性質:密度が小さい。高融点、高強度。耐食性が高い。
用途:自転車・メガネのフレームなど。
クロムCr
性質:高融点、耐食性、耐摩耗性に富む。
用途:クロムメッキ、ニクロム(ニッケル+クロム)などの合金。
マンガンMn
性質:鉄よりも固く、反応性も高い。
用途:マンガン銅などの合金。
ニッケルNi
性質:鉄に似ており、磁性を持つ。
用途:ニッケルメッキ、合金など。
リチウムLi
性質:最も密度が小さい金属である。反応性が非常に高い。
用途: リチウム電池、リチウムイオン電池など。
合金
合金とは2種類以上の金属から構成されている金属である。混ぜる金属の種類、割合によって性質が異なる。合金と言っても様々な状態があり、完全に溶け込んでいる状態、結晶レベルでは成分の金属がそれぞれ独立している状態、原子のレベルで一定割合で結合した状態などがある。
ステンレス鋼(Fe・Cr・Ni)
ジェラルミン(Al・Cu・Mg・Mn)
黄銅(Cu・Zn)
青銅(Cu・Sn)
白銅(Cu・Ni)
ニクロム(Ni・Cr)
マンガン鋼(Fe・Mn)
有機化合物の利用方法
有機化合物とは
炭素原子を骨格とした化合物を有機化合物と呼ぶ。簡単な構造である単量体(モノマー)が非常に多数結合した重合体(ポリマー)などの高分子化合物 も有機化合物に含まれる。
天然に存在するデンプン、セルロース、タンパク質などの高分子化合物は天然高分子化合物と呼ぶ。一方、科学工業品であるポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子化合物は合成高分子化合物と呼ぶ。
メタン
用途:都市ガス、燃料電池
エチレン
用途:化学工業の原料。 ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラートなどが作られる。
エタノール
酢酸
ポリエチレン(PE)
用途:レジ袋、容器
ポリ塩化ビニル(PVC)
用途:パイプ
ポリエチレンテレフタレート(PET)
用途:ペットボトル