今も急速に発展しているAI(人工知能)
今も急速に発展しているAI(人工知能)だが、特に医療向けのAIの可能性はあらゆる面で大歓迎されている。
医療用AIにより今まで医師しか出来なかった業務が軽減されれば、診断の自動化による高速化とコストダウンなどのメリット、医師の人件費削減などの効果が得られる。
そうした中でも急成長しているのが画像解析分野の医療用AIである。
この分野はディープラーニング(深層学習)という機械学習法によって目覚ましい進歩を遂げており、その成果はがんや目の症状といった病気の診断に応用される。
画像を使った病気の診断に限れば、AIはすでに人間のお医者さんに匹敵するくらいの性能を備えているのだと研究メンバーはいう。
医療用AIは人間と同等以上の成果を確認
画像解析向け医療用AIによる最新の成果の中には質の低い研究も散見されることから、限られた研究に基づいているに過ぎないと警鐘を鳴らす意見もある。また、AIの性能の評価は発展段階にあり、ディープラーニングによる画像解析技術が人間の技能に追いついたのかどうかはまだ疑問視されている。
今回紹介する研究は、この問題についての初となる多角的な観点から見たAIの評価であり、結果としてAIは人間と同等の診断技能を有していることが確認された。
まず、関連研究を最初に検索した時点では2万本以上がヒットした。
しかし、きちんと人間の病気を対象とした良質なデータを報告し、単独のデータセットの画像を用いて訓練されたシステムを評価しており、かつ人間の医師に同じ画像を診断してもらい、その結果を比較した研究はたったの14本しかなかった。
選ばれた14本の研究からさらに有望な結果を集めると、AIは病気を87%の正解率で検出できることがわかった。それに対して、人間の医師が同じ画像で診断した場合は86%だった。
また健康な人の画像である場合は、AIと医師でそれぞれ93%と91%の正解率だった。この結果から人間に匹敵し今後は人間を凌駕していく技術と言える
image credit:Pixabay
AIの解析能力を検証するのは難しい
ただしこれらの研究において、医師は実際の現場なら得られるだろう画像以外の患者の情報を一切与えられていない点に注意しなければならない。
人間医師なら、年齢や性別、体重、過去の病歴などを診断の手がかりとするだろう。
またマスコミではディープラーニングによるAIの解析能力が盛んに取り上げられ、人間を大きく凌駕すると述べられることも多い。
しかし、今回の研究で図らずも明らかになったように、その力を多角的に検証した研究は非常に限られている。
研究の中心人物である英バーミンガム大学病院NHSファンデーション・トラストのリュウ・シャオシュアン博士は、
AIが人間を超えたというニュースをいくつも目にするが、私たちが伝えたいのはせいぜい同等と言えるということだ
と話す。
ディープラーニングは強力で有望な技術だが、医療の現場で働く人たちはきちんと現実に即した目で、それが実際の現場にどのような価値を与えてくれるのか考えねばならないようだ。
この研究は『Lancet Digital Health』(9月25日付)に掲載された。
References:Lancet Digital Health / The guardian / redditなど / written by hiroching / edited by usagi